「笹倉せんせっ!」


(やっぱりコイツかっ!)


ギロリと睨みつけようとするが目にも粉が入りそうになり、彼女は慌てて顔を背けた。

それにチッと教師らしかぬ舌打ちを当たり前のように笹倉はするが、何の意地か亜子が背けた顔の方に腕を伸ばしまた粉を溢れさせる。


「へっくょんっ! ちょ、先生、もう起きたからっ!」


しかしそれでも彼は止めない。


「へっくっ! あーもーすいませんでしたっ!」


投げやりにでもそう口にすると、やっとそれは止んで目の前にあった煙の元凶は、スと身を引いた。


「くっしゅっ、鼻水がーっ!」


鼻をごしごしと拭ってそう叫ぶ亜子。


「…峯」


そんな状況の中、静かに彼女を呼んだ笹倉に何事かと目が潤んだまま顔を向ける。


「お前のせいで俺のスーツが汚れた」

「知らんわっ!大体もう起きた時点で止めればよかったじゃんっ!」


至極真面目な顔で呟く教師に、煙が未だに辺りにある中で亜子は反射的に叫んだ。