海と名乗った青年が去って、南川家は静けさが侵食する。
何がどうなっているのか理解できず、あの少年が残していった言葉を繋ぎ合わせようとするけれど、うまくいかなかった。

「いきなり現れて、なんなの?あのこの言ってたこと、全然理解できなかったんだけど。
だいたい、あたしは今まで目を覚まさなかったの知ってて、意味わかんない…」

誰に対するものかもわからないまま、感情を込めて捲し立てる。

「菖蒲、少しは落ち着きなさい」

「落ち着いてられないよっ! 全部あたしの所為みたいな言い方されて・・・」

「すべてはワシの責任だ。封印が解けかけていたのにも気付けなんだ・・・」

そう項垂れる千影は、無念そうに唇を噛みしめる。