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時計の針は、夜中の2時を示していた。メリーは、仮眠を取りながら陽一の護衛をしていた。


カーテンの隙間から、陽一の様子を覗いた。窓から差し込む月の明かりが、陽一の眠るベットを薄暗く照らし出す。


陽一が、ぐっすり眠っているのを確認してから、カーテンを開けて、陽一の傍に近づいた。陽一の顔を覗き込むと、起きている時とは違い、本来の姿である様に幼い表情でぐっすりと眠っていた。


その表情を見て、メリーは胸をなで下ろす。いつも、14歳の少年とは思えない大人びた発言をする陽一。本来の姿を見る事が出来て、安心したのだ。


そして、傍に行って何かをするのではなく、ただ陽一を見つめながら考えた。


どうして、私に優しく接してくれるの?初めて会った時の様に、幽霊(わたし)を拒絶し続けて欲しかった。なのに----。


《今此処に居るって事は生きてる証だろ。誰がなんと言おうと、俺はそう信じてる。幽霊(おまえたち)は、生き続けているって》


ねぇ、陽一。貴方があの言葉を言った時、とても嬉しくて涙が出そうになったの。きっと、私だけじゃなくて、他の幽霊達も喜んでいたと思う。

陽一の優しさに触れたのと優しい言葉を貰って、私は幸せ者だと思う。

でも、私は知っている。その優しさが、いつか貴方自身を殺すことになる。かつて、あの人が死んだように-----。

貴方の優しい所や真っ直ぐな所と容姿も力もあの人とそっくり。貴方は、あの人の生まれ変わりなんだよね……。


だからこそ、辛いの。陽一が優しく私に接してくれるたび、罪悪感で胸が締め付けられる。何よりも、“G.S.Sのメリー”として、私自身が保てる自信が無い。


かつて、心の奥に封印していた“何も守れなかった私”を呼び覚ましてしまう。だから、お願い。これ以上、私に優しくしないで。だって、私は、私は-----------。


『貴方を殺したのも同然なのよ……』


深い眠りにつく幼い少年の耳に入ることはなく、ただ悲しみの籠もった声が静かな部屋に小さく響き渡った-----。