轟音に目が覚めた。
ボクは寝ぼけて滑り落ち、崩れた新聞の上でバランスをとれずにずっこけた。
天井から小刻みにくずが剥がれ落ち、そこらじゅうに埃が舞う。
何だ?
ボクは机の下に飛び込んで様子を見ていると、空から何かが降ってきた。
黒い、大きな灰。
僕は外に飛び出した。

真っ黒だった。
真っ赤だった。

町中が火の海だった。

爆音で掻き消える空襲警報、黒煙と紅蓮の炎に飲まれていく人々。
甲高い悲鳴に振り向くと、崩れた家の側で女の子の背中が燃えていた。
下敷きになった母親を助けようとしていたみたいだった。

赤いスカートが炎に包まれていく。

『ちび』
『ちび、逃げて!』

ああ、思い出した。
どうして忘れることができたんだろう。
あの娘はボクの、大切な家族だったのに。

爆音がして、ボクの目の前で町が破裂した。