結ぶのは、体育の授業くらい。


さすがに左右に髪の毛が揺れて、鬱陶し
いので、ポニーテールにするくらいだけ
ど。



それからしばらくすると、チャイムが鳴
った。



「あら、誰かしら」


「あ、お母さん、いいから」



洗い物をしていた手を止めて、不思議そ
うに玄関へと視線を向けたお母さんをそ
う制して、学校の指定鞄を肩にかけた。



リビングから出ていく時に、いってらっ
しゃいとお母さんが微笑んだのに、私は
微笑めずに、うん、と素っ気なく返した




───『辛いなら、行かなくていいのよ




ふと、お母さんが泣きながらそう抱き締
めてくれたのを思い出した。



あの時に流したのが、きっと私の最後の
涙だった。