その割に足下には何本も…って言うより山になった吸い殻。かなり前から待っててくれたの?
車に乗せられてまずは自宅へ。明日必要な荷物は車に積んでおいてくれるって言われたから、小さいキャリーバックに着替えやら一応お泊まりセットも入れた。ヘアメイクされたまま私服は変だから、シャワールーム借りたりしたいし。


「お待たせしました」
「さあ、行こうか」
「はい」

車に乗り込んで移動したのはこの辺りでも超が付く高級ホテル【インペリアル】…敷地に足を踏み入れるのは初めてで緊張したけど、上層階にあるとは思えない中庭付きの和食のレストランは個室で、ゆったりしてるのに広すぎないから落ち着く。

「こじんまりしてて何だか落ち着きます」
「気に入ってもらえたようだね」
「はい、お料理もシンプルな味付けで美味しかったし」
「ここは俺も気に入っているんだ」

何度も他の誰かを連れてきたんだ…?私と来る前に…。

私だけ好きでいてくれるなら…それ以上なんてないのに。巽さんは私を見てくれてるわけじゃない…ちょっと珍しいだけ……。
他の人を連れてきて、評判よかったから私も連れてきてくれたの?私のリアクション、他の人と同じだからいけると思った?

「疲れたかい?」
「あ…いえ……」
「ぼぅっとしてる」
「…すいません…」
「でも本当によかったよ…仕方ないとは言え、会えないのは淋しかった」
「すいません…」

責められてるみたいな気がして、思わず謝ると、巽さんは苦笑い。

「いや無事合格出来てよかった。これでまた会えるようになるかな?」
「あ、はい。お休みが合えば…」
「休みでなくとも店に迎えに行くよ。大抵俺の方が君より早く上がれるから」
「そんな…お待たせしちゃう…」
「待ってでも、少しでも会いたいんだ」
「た、つみさ……」
「毎晩だって…君に会いたいし、いつでも声を聞いていたい」

もう…ダメ…好き…今だけしか興味持ってもらえないのがわかってても……。