及川商事の社長、及川光一は大学の同期だ。東雲は俺もよく知る後輩で、苅谷とも親しかった。

『先輩としては祝わずにはいられないでしょう?』
「そうだな…祝いの品は任せる」
『手配します』
「いや…こっちで検討してから連絡する」
『…わかりました』

これはいい口実になるな…苅谷に任せるには惜しい。
突然のパーティーだが、これも絶好のチャンスに変わる…苅谷の言葉を鵜呑みにするわけではないが、これから起こる事は俺次第…か。そうなれば明日の予定はすぐに決まった。

ふと携帯が聞き慣れない着信音と共に震える。サブディスプレイには【メール着信あり】の表示。
メールボックスには【相模 呉羽】…こんな事に酷く緊張しながらメールを開く。

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今日はありがとうございました。
予想外でしたけど楽しかったです。
明日…というかもう今日なんですけど、九時間と少し後にはまた会えるなんて、まだ信じられないくらいです。

じゃあまた九時間後に。
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九時間後…か。
また明日と言われるよりもずっと早く会えるような気がする言い回しだ。彼女も楽しみにしていてくれるのだと感じさせられた。
初めて出会ってまだ二週間を越えたばかりだが、こんなに恋しく想えた相手は一人としていなかった。彼女が俺の【一生のうちの一人】だからだろうか?
それなら俺は…彼女にとっての【一生のうちの一人】になれるだろうか?
そう…なれたらいい、と…切望する俺のように彼女は俺を想ってくれるようになるだろうか?
全てが俺の成長と俺次第ならば…俺はその努力を惜しむ事なく邁進するしかないな……。