「あぁ~先輩、その顔は何かを勘ぐってる顔ですねぇ~」

「未歩ちゃん、人の顔見て心のなかを読むのは、やめたほうがいいと思う」


いつから私の心を読んでた? これからは、会社でも気をつけないと。


「でも、婚約を解消したふたりが、仲良く一緒にいるのは変ですよねぇ~」

「そこなのよっ!!」


突然大声を上げてしまった。


最初は『私、龍之介に騙されてたんだ!!』なんて思って腹を立てていたけど、どうもあのふたりはよりを戻したっていう感じじゃないんだよね。


「菜都せんぱ~い、まだ社員旅行は始まったばかりですし、ゆっくり探りをいれてみましょうよ~」

「うん、それもそうだね」

「そうと決まれば、まずは腹ごしらえですぅ~」


未歩ちゃんがお腹を擦りながら、部屋のカードキーを持って立ち上がる。


そうかっ!! 6時から大広間で宴会だ。


と同時に、私のお腹が大きな音を鳴らした。


「あははっ、今日のお昼、あまり食べてなかったんだ」


あおのふたりのことが気になって、食事どころではなかったから。


「今晩の舟盛りは、イシガレイがメインらしいですよぉ」

「じゃあ今日は、日本酒飲んじゃおうかな」


未歩ちゃんのお陰でテンションが上り、彼女の手を握るとそのまま部屋を飛び出した。


「先輩、はしゃぎ過ぎですぅ~」


私に手を引かれながら一生懸命についてくる未歩ちゃんの姿に可笑しくなって、少しだけ嫌な現実を忘れることができた。