「待ってー、待ってよ雄馬(ユウマ)!」



下駄をカラカラと鳴らしながら目の前を走る少年を追いかける。



「へへっ、柚子(ユズ)は遅いからなー。待ってたら日が暮れちまうって」



少年はそう言って光の中を跳ねる様に走ってゆく。



「遅くないよ! 今日は浴衣だから上手く走れないんだよ!」



大きなお団子を頭のてっぺんで結った私の周りには、たくさんの出店が立ち並ぶ。


小学生の私にとっては、夜の人混みは少し怖い。


お祭りの熱ですら少し恐怖に感じるほどだ。


だけど、その恐怖を払拭してくれるのは目の前にいる雄馬と、もう1人。



「柚子、雄馬に合わせる事はないよ。はぐれたら危ないから、僕たちはゆっくり見て回ろう」



俯いて唇を尖らせていた私は、その声の主に満面の笑みを向けた。



「優(ユウ)!!」