ある日の教師と生徒の話。


「この公式についてだが……」


数学の教師───笹倉(ササクラ)が公式について説明する。

今は五時間目の授業の最中だ。

この時間大体の生徒は眠気と闘い、こくりこくりとするのが数人は必ずいるのだが。

そうなる生徒はひとりもおらず、いつも以上に気を張って真剣に授業に取り組んでいた。

理由は簡単。教師の笹倉は全校生徒から恐れられているからだ。彼に任せれば優等生や普通の子は勿論のこと不良も机にむかって勉強する。

前に彼が気に入らなくて喧嘩をふっかけた不良がいたのだが、瞬殺だったらしい。

それからその不良に一体何が起こったのかは分からないが、髪を黒髪に戻し眼鏡を着用し制服も模範通りに着こなして毎日登校しているという。

その話が瞬く間に広がり、教師最強の座に君臨することになった。


しかし、例外がひとり。

机に突っ伏して堂々と寝ている生徒、峯 亜子(ミネ アコ)という女子生徒。

彼女は相手が他の教師だろうが笹倉だろうが態度を変えることはないという、ある意味肝が据わっていた。