ケータイ小説 野いちご

シスター・オルランドへの手紙


リルは小さな吐息を洩らす。

……ああ、それにわたしは。
自分の決意が固いものだと言い切れるか、不安な気持ちにもなり始めている。
だって、あの写真の修道女たちのように、あれほどの誓いの証を立てることができるほどに、心が決まったとは言いきれない。

なぜ、あんな怖ろしい本を、わたしは見たりしてしまったのかしら。あんなことを知らなければ、こんなにも不安にならずにすんだ。
腹立たしいような気持ちすら涌きおこるほどに……。

そう。あんな本を。
あのひとが持ってきたりしなければ。

そして、リルの眼前に、テディの髭だらけの顔が浮かぶ。

あの、焦げ茶の大きな目。
なぜなのか、あれからなんども、くちびるに感触が蘇る。
あのやわらかで熱を帯びた……。

そのたびに、耳元が、身体が熱くなる。小刻みに身体が震えた。

リルは、瞼を閉じて、両手を胸の前で組み合わせる。

……本で読んだことがあったけど、よくは解らなかった。でも。
これがきっとあの『肉慾』というものに違いない。

『試練』というものなのだ。

ああ、でもよく知りもしない、あんなおとこの人に……?
なんて、なんて恥ずかしいことなのかしら?!

シスターに道を示して頂かなくては……正しい道を。イエス様への道を。

リルは、新しい便箋を取り出して、ペンを準備した。

でも。
なんて書けばいいの。あんな……。
あんな出来事を?

恥じらいとためらいで、リルの胸が詰まる。

そして、まるで兄と同じように、眉間に深く皺をよせると、リルは真っ白な便箋に向って、深い深い溜息を吐き出した。

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