桜舞う4月ー
あたし一条萌は、今日から高校生です。
「もーえっ」
高校の昇降口であたしに手を振る女の子。
「あーちゃんっ」
あたしの親友、佐々木彩。通称あーちゃん。
黒のショートカットがよく似合う、元気で活発な女の子。
「あれれ~?萌ったら髪染めちゃって~」 
「えへへ♪高校デビューだよ」
あたしは、高校に入ると同時に髪を栗色に染めた。
前まではストレートにしてたけど、今は巻き髪。
「おこちゃまの萌には似合わないぞ~!」
そう言いながら、あたしの頭をたたくあーちゃん。
「ちょっ!!これ以上縮んだらどーすんの!?」
「あはは~縮め~!」
…そう、あたしのコンプレックスの一つが身長。
145センチって、小学生レベルじゃん?
いつも身長でからかわれるから、本当イヤになっちゃう。
髪を染めたのは、大人に一歩でも近づきたかったから…。
「さ、クラス表でも見にいこうか!」
「うん、あーちゃんと同じクラスがいいなぁ」
「私も萌と同じがいいな」
玄関にはってあるクラス表を見て、自分の名前を探す。
「一条…一条萌……あった!!A組」
「私もA組!やったね」
よかったぁ~あーちゃんと同じクラス。
人見知りなあたし、それも一つのコンプレックス。
「じゃ、教室いこうか」
「そだね!」
あたしたちは教室に向かった。


「わ~見て萌、知らない人いっぱい」
「うぁ…なんかイヤだな」
二人で、教室のドアの前でうじうじしていると、
「おい、邪魔」
ぶっきらぼうな声が頭の上から聞こえてきた。
「は?」
すぐさまあーちゃんが反応した。
「だから、邪魔なんだよ。どけろ」
恐る恐る、声がする方に頭を向けると、
「うわ!!」
「あ?」
やば!!思わず声あげちゃったよ!!
「てめぇ…なに声出してんだよ」
声だってあげるよ!
だって、そこにたっていたのは…
金髪で、ピアスじゃらじゃらで、学校なのに私服を着ている男子。
まさに…ヤンキー。
「ちょっと、あんたねぇこの学校の生徒なの!?」
あーちゃんがヤンキー君に話掛ける。
「あ?そーですけど、なにか?」
「だ、だって私服だしっ…」
さすがのあーちゃんも、ちょっと怖いのか、声が震えてる。
それより大きいなぁ…180は越えてるでしょ、絶対。
「じ~~~~っ」
「てめぇ、なにじ~~~~っとか言ってんだよ」
「ひゃう?!」
動作を声にだしちゃった!変な人だと思われちゃったじゃん!
あ~もう、はずかしい!
「ぷっ」
「へ?」
ヤンキー君が笑った。
「可愛い奴」
「な!?」
いいい、今、可愛いって言った?!
「じょうだ…」
「冗談だっつーの、ばーか」
「くっ…」
なんなんだ~~!?あのヤンキー!!
「小学生は小学校に行ってくださ~い」
「はぁぁぁぁぁぁ?」
むかつく~~~!!!
「あの人、なんなんだろーねあーちゃん」
「………」
「あーちゃん…?」
「え?ああ、なんでもないっ!本当変な人だね、あはは」
なんか、あーちゃん変だな。
「あーちゃ…」
♪~新入生は体育館に集合してください~♪
校内放送が入った。
「萌、行こ?」
「う、うん」
あーちゃんに聞こうと思ったけど、校内放送のせいで聞けなかった。
あーちゃん…もしかして…。


「えー、1年生の皆様…」
校長先生の話って長いよね…疲れちゃう。
只今、入学式の真っ最中。
みんな緊張してるのか、表情がかたい。
でも…緊張してないのが…
「ぐ~、ぐ~」
寝てるし…。
あたしの隣にいるのは、さっきのヤンキー君。
いびきかいて寝てるんですけどー…。
「ねぇ、起きたら…?」
「ぐ~…」
膝をたたいてみるも、起きようとしない。
ばかだ。このヤンキー君ばかだ。
入学式に寝るなんて…。
「では、次に教員の紹介に入ります」
教頭先生の一言で、先生たちがステージに上がった。
「萌、担任誰だろうね!」
後ろに座っていたあーちゃんが、あたしの肩をたたく。
「う~ん、イケメンがいいな~」
「ったく萌ったら。あの人とかは?」
あーちゃんがとある先生を指差す。
「-っ!!」
ドキドキ…ドキドキ…
なに?この胸の鼓動…。
「もーえ?」
あーちゃんが指差した先生というのは、
長身で、茶髪で。
切れ長の目に吸い込まれそう…。
「やばい…」
「萌、どした?」
「かっこいい…好きになっちゃったっ…」
「はぁ!?」
胸が、きゅんきゅんなってる。
この気持ちは恋に違いないよね…?
先生に見とれてると、先生が喋りだした。
「新任の神宮寺恭介です。1年A組を担任します」
「えぇぇぇ!?」
「ちょっ、萌!!」
「はっ!」
やばい、やばい~!!びっくりして声あげちゃった。
まさか…本当にあたしの担任に…!?
すごく嬉しい…。
「はは」
「ん!?起きてるっ」
隣のヤンキー君が笑ってる。
「せっかく寝てたのにっ…てめえの声で起きちまった…」
なんであたしが怒られなきゃいけないの!?
本当この人うぜーーーー!
「あ、俺らの担任って、神宮寺恭介なのか?」
「そーだけど」
「マジか…最悪っ」
なんで最悪なの!?あんなにカッコいい先生なのに…。
「恭介先生かぁ…」


これが、あたしの初恋…。