「私は適当に楽しんで帰るわ。タイプの男がいたら捕まえたりして」
「……本当に?」
「本当に。それに私の本当の楽しみは今日じゃないからいいの。
今日、美琴と黒崎が観覧車に無事に乗ってキスした先に、私の幸せが待ってるのよ」

「ね、黒崎」と意味深に笑う彩乃に、大和はライブチケットの事を思い出し、ああと笑みを返す。

「もう十分してもらったから、合格だ」
「ホント?! もう言ったんだから前言撤回はなしだからね!
もし、観覧車で黒崎がヘマしてもチケットは私のモノなんだから郵送で送ってよ!?」
「しねぇよ。演技悪い事言うな。チケットもちゃんと送るから」
「書留で確実にね!」

そんな会話を交わすふたりを不思議に思いながらも、早く早くと急かす彩乃に言われるまま、大和と観覧車に向かって歩き出した。
再び、手を取って。

「じゃあ頑張ってくる。夏休み中、また連絡するね」
「うん。今日のこれからの事も聞きたいし、私も連絡する。黒崎とばっかり遊んでないで私とも遊ぼうね」
「うん、もちろん。じゃあまた」

彩乃は笑顔で手を振ってから、大和にほんの一瞬視線を移しうまくやれよとでもいうようにアイコンタクトを取る。
それに大和も答えてから、よし、と自分自身に気合いを入れて美琴と観覧車に向かった。