彩乃の言う事は分かるし、大和の整った外見についても反論はない美琴だったが、それにしたって広田が言っていたように言われるのは嫌だった。

もちろん、大和の人間性を大学内の生徒全員に分かって欲しいなどとは思っていないし、自分だけが理解していればいい事だとも思っているのだが。

だけど、好きな人を目の前でバカにされるが嫌なのは、誰でも同じだ。

「黒崎の過剰行動で、黒崎が美琴に病的に入れ込んでるって事はもうみんな知ってるのにね。
それでも黒崎も未だに告白とかされてるみたいだし、現代っ子のくせにみんな恋愛に熱心よね」

大和を病的だと笑いながら言う彩乃に、美琴が苦笑いを浮かべる。

現代っ子の定義はよく分からないが、男なんていてもいなくても今が楽しければどっちでもいいと達観している彩乃こそそうなのかもしれないと美琴は思う。
性格も恋愛も竹を割ったようにさっぱりとしていて、見ていてそれは気持ちがいいほどだ。

「別に大和は病的ってわけじゃ……」
「病的でしょ。その呼び方だって黒崎に強要されたわけでしょ?
あいつ、他の女が名前で呼ぶと嫌がるくせに」
「あ、うん。なんか名字で呼ぶと名前で呼べってうるさいから」