そのあと、二人でお弁当を食べました。私の手作りのサンドイッチやおにぎりを健介君は残さず食べてくれました。


おなかいっぱいになった私達は、崖のふちに座って、のんびりと景色を楽しみました。


高い崖から見下ろす、連なる山々の風景はとても神々しく、眺めていると、私のデートコースが崖だったことに対する疑問なんてどうでもよくなってきました。


横にいる健介君を見ました。
健介君は静かな眼差しで、空を見上げていました。
風が、彼の前髪を少し揺らします。


やっぱり……、かっこいいな、と思いました。


私の視線は、健介君の顎、喉、胸元をなぞりました。空手の道着の開いた襟から、裸の胸が見えます。うっすらと汗が反射して、綺麗に輝いています。
私は喉を鳴らして、それを見つめました。
しばらく見つめました。
……見つめました。
……見つめました。
……凝視しました。


だんだんと、私は、その、なんというか、その、…………ムラムラしてきました。
健介君のひきしまった肉体に、あんなことやこんなことをしてみたくなりました。


……誘惑しちゃおうかな?


私は決意すると、持ってきたリュックから、さっきお弁当を食べた時に敷いたビニールシートを取りだし、地面の上に広げました。
そしてそこに、仰向けに寝転がると、シャツのボタンを少し外し、胸の谷間が見えるようにしました。スカートの裾をたくしあげ、太股の露出を増やしました。
そして私は唇を舌で濡らし、できるだけいやらしい目付きをし、色っぽい声で、「健介君……、きて……」と囁こうとしたのですが、さすがに緊張してしまい、気がつけば私は、


「健介!カモンッ!」
と蝶野正洋選手の声色で叫んでいました。