「きゃははははっ!お兄ちゃん、赤くなってる!かわいい!」
「ゆ、由美!てめえ、ふざけんじゃねえよ!」
「大丈夫だって。下に水着着てるんだから」
「水着?」
俺はそっと目を開いた。


目の前には、青いビキニを着た由美がにっこりと笑いながら立っていた。床に、シャツとジーンズが脱ぎ捨てられている。


俺はため息をついた。
「あれ?裸じゃなくてがっかりした?」
「殴るぞてめえ」
「冗談よ。もう、マジメなんだから。ねえ、お兄ちゃん。駅前に温水プール場ができたの知ってる?明日日曜日だし、由美と一緒に泳ぎにいこうよ!」
「駄目だ。明日は用事がある」
「えええええっ!そんなあ!せっかく新しい水着買ったのにい!」
「クラスの友達とかと一緒に行けよ」
「それじゃあ、意味ないよう」
「なんでだよ?」
由美は、ぷうと頬をふくらませながら下を向いた。


「…………お兄ちゃんに見てもらいたくて、この水着買ったのに…………」
由美はぼそぼそと何かつぶやいた。


「あ?なんだ?聞こえないぞ」
「何でもないよ!お兄ちゃんの鈍感!だいたい用事って何なのよ!?こんなかわいい幼なじみさしおいて!」
「自分で言うなよ……。修行だよ」
「はぁぁっ!?バッカじゃないの!?そんなのいつも道場でやってるじゃん!」
由美があきれた顔をする。
「今回は特別なんだよ。学校で、すげえ強い奴に出会ってな。そいつと意気投合して、明日、山で一緒に修行しようって約束したんだ」
俺は、目を輝かせて言った。
由美はため息をついて言った。
「あーあ、もうやだやだ。お兄ちゃん男臭すぎ。強い奴ってどんなひとよ?不良?暴走族?なんか武道やってるひと?」
「同じクラスの女子だよ」
「…………は?」
「南斗晶さんっていうんだ」
由美は目を丸くして、少し黙ったあと、道場を揺らすくらい大声をあげた。
「ええええええええええええええええええええええええええええええっ!!?」