夕食後、誰もいない静かな自宅の道場で、正拳突きの練習をしていた。


あることで、頭の中がいっぱいになっていたからだ。


南斗さんと一緒に帰る時、何回も投げ技を仕掛けられたのだが、その瞬間に、二人の体が密着してしまい、その、腕に胸を押しつけられたりして、その…………意外と大きいなって…………。


いかんいかんいかんいかぁぁぁぁぁぁぁん!!


南斗さんは善意で、俺の修行に付き合ってくれているのだ。そんな邪な気持ちを抱いていては彼女に失礼だ。
邪念を振り払うべく、俺は正拳突きの練習に力をこめた。


「あっ、いたいた!お兄ちゃあん!」


その時、かわいらしい声が道場内に響いた。
振り返ると、道場生の、角田由美が入口の所で手をふっていた。
「なんだ由美か……」
「なんだじゃないでしょ。探したんだから」
由美は小走りで近付いてきた。


角田由美は、うちの道場の女子部に通う、十四歳の少女だ。幼なじみで、昔からやたらと俺に甘えてくる。


「いま練習してんだ。出ていけ」
「また練習?お兄ちゃん、あんまり頑張りすぎたら、体壊しちゃうよ」
「おれの勝手だろ。なんだ、なんか用か?」
「あ、そうだった。ねえ、お兄ちゃん!見て見て!」
なんだよ、と言いかけて、俺はブッと吹き出した。


由美が突然着ていたシャツとジーンズを脱ぎ出したのだ。


「馬鹿野郎!お、お、おまえ何やってんだ!?」
俺は目をつぶって怒鳴った。