「ええええええええっ!?」


突然甲高い叫び声が響いた。南斗さんの声だった。


「びっくりした。なんだよ、急に大声あげて?」
「健介君、いま、付き合ってほしいって言った?」
「ああ、言った」


南斗さんは、何をそんなに驚いているのだろうか。彼女もなんらかの格闘技をやっているはずだ。強さを求める者同士が一緒に修行することが、そんなにおかしいことだろうか?


「でも、どうして?私、昨日健介君にドロップキック喰らわせちゃったのに……」
「へえ、あの飛び蹴り、ドロップキックっていうんだ」
「う、うん」
「俺さ、あのドロップキックに惚れちまったんだ」


そう。あのドロップキックの威力に惚れこんで、俺は南斗さんと一緒に修行をしたくなったのだ。
同時に彼女の白いパンティを思い出して、俺は、はにかんだ笑みを浮かべた。


南斗さんは、不安そうに聞いた。
「でも、私なんかでいいの?私、プロレスラーだよ?女の子なのに、馬鹿力なんだよ?お話とかも、あんまり上手じゃないし、それに……」


何をよくわかんないことをゴチャゴチャと。
「君じゃなきゃ駄目なんだよ!」
俺は彼女の両肩をつかんで、強く断言した。
こんな女子高生、他にいるものか。


南斗さんはなぜか目に涙を浮かべ、顔を赤らめた。その表情に、一瞬ドキッとしてしまった。


南斗さんは言った。
「お付き合い、させて、いただきます」
「付き合ってくれるんだね?ありがとう!」
これで、俺は、最強の男にまた一歩近付ける。俺は心の中で、高笑いをあげた。


その時だ。


「イチバーーンッ!!」


南斗さんが突如意味不明な雄叫びをあげ、肘をぶつけるような奇妙な攻撃を繰り出してきた。


おれはとっさにそれをかわした。ギリギリだった。まさかこのタイミングで攻撃がくるとは思わなかった。相変わらず殺気が感じられない。すげえ。一応警戒していて良かった。
「昨日は油断してたけどね。もう、そう簡単には喰らわないよ」
そう言うと、南斗さんは、物凄く嬉しそうな笑顔を浮かべた。


……なるほど、すでに修行は始まっているってわけか。


俺は、ふと胸を見下ろして、驚愕した。
さっきの攻撃がかすったところ、制服のシャツの胸の部分がさっくりと切れているのだ。


ぞくりとした。


俺は、弾けるような笑顔を浮かべた。


この女、面白え。こいつとの修行を乗り越えれば、俺は間違いなく最強の男に大きく近付ける。


俺は、幸せな気分に包まれた。