「ええええええええっ!?」


私は思わず大声をあげてしまいました。


うそっ!これって告白!?なんでなんでなんでっ!?


「びっくりした。なんだよ急に大声あげて?」
「健介君、いま、付き合ってほしいって言った?」
「ああ、言った」
真剣な表情でうなずいてくれました。


「でも、どうして?私、昨日健介君にドロップキック喰らわせちゃったのに……」
「へえ、あの飛び蹴り、ドロップキックっていうんだ」
「う、うん」
「俺さ、あのドロップキックに惚れちまったんだ」
はにかんだ笑みを浮かべながら、健介君はそう言ってくれました。


私のドロップキックが、美しかったってこと?
うちの団体のレスラー以外の人に、技をほめてもらうのは初めてでした。
嬉しさが、こみあげてきました。


「でも、私なんかでいいの?私、プロレスラーだよ?女の子なのに馬鹿力なんだよ?お話とかも、あんまり上手じゃないし、それに……」


「君じゃなきゃ駄目なんだよ!」


健介君は、わたしの両肩をつかんで、強く断言してくれました。
私は胸がいっぱいになって涙が浮かんできました。


顔を赤らめながら、私は言いました。
「お付き合い、させて、いただきます……」
「付き合ってくれるんだね?ありがとう!」
健介君は、弾けるような気持ちのいい笑顔を見せてくれました。それを見た私は胸がきゅんとなって、心臓の鼓動が急に早くなりました。


そして気がつけば私は、
「イチバーーンッ!!」
と叫びながら、近距離からのアックスボンバーを放っていました。


ところが、健介君は、華麗な動きでそれを見事にかわしてみせました。
「昨日は油断してたけどね。もう、そう簡単には喰らわないよ」
健介君は涼しげに言いました。


そうです。健介君は空手部のエースなのです。強いのです。ということは、私が突然プロレス技を出しても、余裕でそれをさばけるわけです。
私にとって、なんて理想的な彼氏なのでしょう!


わたしは、幸せな気持ちに包まれました。