放課後になりました。
校舎裏の桜の木の下で、私は健介君を待ちました。
健介君は、すぐに来てくれました。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
「んーん、わたしもいま来たばかりだから」
声が、震えてしまいます。
恥ずかしくて、顔をあげることができません。
頬が、熱くなっているのが、自分でもよく分かります。
「それで、南斗さん、話って何かな?」
「あ……、うん」
私は、大きく深呼吸をしました。そして意を決して、ゆっくりと顔をあげました。


健介君と、目があっちゃいました。緊張が高まりました。


その瞬間、全身がかっと燃えるように熱くなりました。血が一気に頭に上ります。


ああっ!ダメ!いまはダメなの!


わたしは、胸の底から沸きあがる衝動を必死で押さえようとしました。


落ち着かなきゃ!いまだけは、いまだけは出しちゃダメ!あれを出したら、健介君に嫌われちゃう!


しかし、私の弱い精神は、体に深く染みついた悪い癖を、止めることができませんでした。



「健介!死ねやコラァァァッ!!」



私は思い切りそう叫ぶと、健介君の顔面に、勢いよくドロップキックを喰らわせていました。