菜都なんて呼ばれたら、そんな顔されたら、もうダメだって思っていた恋心が溢れてきちゃいそうだ。


仕事で失敗したのを見て呆れて、もう使えないって思ったんじゃないの?


それとも本当は、私の気持ちに気づいていたとか?


気づいていて、意地悪な態度をとったとか?


さっきからの堤所長を見ていると、それもありだなって思えてくるから腹が立つ。


私をどうしようっていうのっ!! もう、わけわかんないっ!!


頭の中がゴチャゴチャになって、また目に涙が溜まってきて、堤所長の顔がぼやけだす。


「全く、世話のかかる女だな。ほらっ、早く頭だせっ」


そう言って、堤所長がタオルを広げた。


“頭だせっ”て、私はカタツムリじゃないってーのっ!!


でもここでそんなこと言ったら、またどうせ“バカ女”呼ばわりされるのがオチ。だったら素直に頭だしておいたほうが無難そうだ。


不本意ながらもゆっくり頭をだすと、意外にも優しくワサワサと髪を拭いてくれた。
さっきまでの態度とは、全然違うじゃない。やっぱりこっちが本当の堤所長?



でもどうやら私の恋、まだ終わってなかったみたいです。