私を刺した後、包丁を床に投げ捨てた健司が、そう言いながら理恵を抱き締めた。


健司が理恵を好きだった事は知ってる……。


だから、翔太に怒った時も、自分の事ではなく理恵の事で怒ったんだとわかっていた。


でも……理恵の事が好きなら、どうして守ろうとせずに襲ったの?


痛みに耐えながら、理恵を見守る事しかできない。


「私も……健司は好きだったよ……好きだったから……あんな事をされたのはショックだった」


理恵が……怒ってる。


声が震えているけど……恐怖した時の震えじゃない。


「留美子も明日香も、ごめんね……また、朝に話すから」


一体……何を言っているの?


ダメだ……血が止まらなくて……頭が……。


「でも、もうあんたなんか大っ嫌い!!」


そう叫んだ理恵は、健司に背中を向けた。


私が意識を失う前に聞いた言葉……。








「ねぇ……赤いの、ちょうだい」








そして、理恵の血で赤く染まった私の視界……。


後は、何がどうなったのか分からずに……私はゆっくりと目を閉じた。