坂道登りきったところで、先生は急にゆっくり走ってくれて・・・

「あそこ、ゴールな!」

そう言って、下足室の入り口を指差した。

先生の優しさ、先生のあったかさ・・


私本当に先生が大好き。




ゴール目前で、私は先生を追い抜いてゴールした。

先生は、うさぎとカメのかけっこみたいに、最後の最後で私に勝ちをくれた。


わざと、はぁはぁ言いながら

わざと、足をバタバタさせて、私が来るの待っててくれたんだ。


「やったぁ!!勝った!!」


私は、嬉しくって飛び上がって喜んだ。

先生も、大笑いしてたね。

「お前のラストスパートに完敗だよ・・」

なんて言ってくれて。


本当は、負けて、先生の罰ゲームも受けたかったな。


どんな罰でも喜んで受けるよ。


「先生、罰ゲーム考えとくね。」

「はいはい・・教室まで、また走れ!!明日は遅刻すんなよ!」


先生。

こんな幸せな朝があるなら、毎日でも遅刻するよ、私。

初めて、先生とちゃんと話した。

一緒に走った。

先生の香りがした。



先生、見てるだけで満足だった私はもう卒業。

先生のせいだからね。


先生が、私のことこんなにドキドキさせるから・・・


やっぱり見てるだけなんて嫌。


話したい。

笑い合いたい。

私の事、知って欲しい。

先生の 『特別』 になりたい。



この日から、毎朝登校するのが楽しくて仕方なかった。

毎日、遅刻ぎりぎりに登校したけど、先生は遅刻指導から外れたみたい。

もう、校門で先生の姿を見ることはなかった。

最初で最後の素敵な思い出。