『どうしちゃったのよっ、菜都っ!! こんな気持ちのままでいるなんて、身体に悪いわよっ!!』

『そんなこと言われたって、どうしたら良いの!?』

『さっさと聞いちゃえばいいじゃないっ!!』

『それが出来れば、こんな状態になってないでしょっ!!』


なんて心の中で自問自答しているうちに、堤新所長の姿は跡形もなく消えてしまっていた。


「あ、あれ……」


一人残された私は、呆然と立ち尽くす。しかし身体に起きた変化は、私の意識をすぐに現実へと引き戻した。


鳴り止まない胸の鼓動。浅く、でも激しく繰り返されている呼吸。
熱くなってしまった身体は、未だ冷めることを知らなさそうだった。


───でも、付き合ってなくて良かった───


この言葉の意味も分からないまま。だから身体は、いつまで経っても元に戻ることが出来なかった。


堤新所長、もしかして私のこと好き……になっちゃったとか? それとも、何の気なしに言った言葉? 
前者であって欲しい気持ちが、更に気持ちを高ぶらせる。そして好きという気持ちを、一気に膨らませてしまった。



菜都。完全に、恋に落ちたみたいです───