「玲、正月、帰んないでよ。」


え、―――?


「どうして?」


「どうしてって、玲と一緒にいたいからだろっ。」


フハっと笑いながら、航太は私の頭にそっと手のひらを乗せた。

じんわりと体温が伝わってきて、とても穏やかな気持ちになる。


「3日の夜には戻ってくるよ?」


クリスマスに会えなかった私たちは、2日遅れのクリスマスを祝っていた。

街はすっかり年末の慌ただしさに変わってしまっていたけれど。


航太の作ってくれたボロネーゼは美味しかったし、私も頑張ってチキンを焼いて。

マッシュルームたっぷりのスープも、作った。


航太の腕の中で眠りについて。

航太の温もりを纏って、目を覚ます。

緩やかな時間が二人の間に流れていて、私はすごく幸せな気持ちで航太を見つめる。


お正月かぁ…。

来年から社会人になるし、そうすると今みたいに休みもなくなるし…。

帰らないわけには、いかないしなぁ…。


う…ん、―――。


「じゃあ、100歩譲って…。」


「100歩も譲るの?」


考え込む私の額を、航太は、つんと、指で突きながら。


「実家、帰るまで、ずっとここにいてよ。」


「ここに? 航太の家?」


「そう。玲とね、こうやってだらだらと過ごしたいんだ。」


私の顎を指で持ち上げると、ちゅ、とキスを落とす。


航太、どうしたんだろう。

いつもは、私が甘えてばっかりなのに。