上下に動く振動でぼんやりしながら目を覚ます。
目の前には、
深い茶色い髪の毛の後頭部。
「え……?」
「ナイスタイミング、ルイ。僕体力無いから此処からは自分で歩いて。」
ダラリとした自分の手足が急に力が入り、今のこの現状をようやく把握する。
どうやら私は雅巳君におぶさっている。
「あ、あぁっ!ごめん!ごめん……。」
「いいよ。ルイが軽かったからまだ助かったけどね。いてて……。」
雅巳君の背中からストンと降りて、消えた記憶を少しずつ繋げていく。
―――スーパーに行った。
―――雅巳君とじゃれあってた。
―――彼がグラタンを食べたいと言っていた。
―――あとは。
あぁ……、夢にも見たくないあの二人の姿を見たんだっけ。
そうだ、見たんだ。
気を失うほどのショックというより、見たくない現状に目を伏せたというのが合っている気がする。
ただ雅巳君には悪いことをした。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
初めて彼と会った時に言っていた。
『ルイが狂った時に周りから浴びせられる冷ややかな目を浴びせられる僕が心配』
雅巳君の後ろを歩く私は申し訳なさで立ち止まり、
ポロポロと情けない涙が溢れてくる。