今朝の、父からの電話が思い出される。

伯母が私に連絡したことを聞きつけたらしい父は、泡を食って電話してきたわりに、何も言ってくれなかった。



『とにかく、姉さんとは父さんが話しておくから。お前は気にするな』

「気にしないなんて、無理だよ…」



もとからあまりぺらぺらと喋るほうではない父は、少しの間沈黙して。

そうだな、と静かに言った。



『すまんな、父さんたちの勝手で振り回して』



まさにそのとおりだよ、と思っていたことなのに、真正面から謝罪されると、何も言えない。

ううん、と小さく答えて、電話なのについ首を振る。



「何かあったら、すぐ教えてね」

『お前が聞くような話じゃ、ないよ。それよりまた、顔を見せに帰ってきなさい』



私の返事を待たずに、通話は切れた。

父の声は気づかいに満ちて温かく、優しい。

幼い頃から大好きな、深くて知的なバリトン。


それがこんなに恨めしく感じたのは、初めてだった。

私、お客様みたい。

どうぞ座っててって言われてしまい、黙ってじっとしてなきゃいけない疎外感。

悔しくて情けなくて、朝から心が鉛のように重くなった。


この陽気なら、お店まで走るうちに自然と乾くだろうと、ドライヤーをやめた。

清潔な服に着替えると少し気分が軽くなって、ほっと息をつきつつ更衣室を出る。


B先輩、私は今、何を信じたらいいでしょう。

誰もかれもが私に全部を話してくれていないようで、これまでにない距離を感じます。

信じられないわけじゃないんです。

ただ、信じてもらえていないように、思えるだけ。