「やぁ、どうしたの?」




「雅巳君の住んでる所って何処だっけ?」





自宅に帰って上着を脱ぎながら迷わずかけた彼への電話。
さようならと勢いよく切ったのはこっちなのに、図々しくも普通に話す私に彼は一言も責めない。




「〇〇だよ。前に言ったよ?忘れちゃった?」



「そうだっけ?此処から電車で一時間半くらいなのね。意外と近いね。」



「来るの?」



「ダメなの?」



「何しに?僕に会いに?」



「その言葉は間違っていないけど、私の目的を果たしてもらう為にって付け加えてもらって良い?」



「フフッ、僕の都合はお構い無しだね。」



「そうね、いちいち都合を聞いていられるほど余裕が無いの。叶えてあげると言ったのは雅巳君の方よ?」



「死にたい奴の言い分は自分中心で物事決められて得だよね。世界がルイみたいな人で溢れていたら、この世も独裁者の論理で人類が滅びていくから楽なのにね。その時まで待ってみたら?フフッ。」








「口だけの男は長生きしそうね。色んな意味で。」




「……言うね。ただ今こうして会話してる間に横で寝ていた女が僕に背中に爪を立てて怒って帰って行ったのを知って欲しいな。」