「あ、あのっ……」 戻ろうとした谷内さんの服を握り、引き止めた。 「どうかした?」と優しくきいてくる谷内さんと、気恥ずかしくて目が合わせられない。 俯きながら、ゆっくりと口を開いた。 「……あり、がとう……佳斗、くん」 ……い、言えたっ……。 それだけが言いたかった私は、お礼を言い捨て顔も合わせずにすぐさま自分の席に。 「……っ、そういうのなしだろ」 佳斗君の顔が、さっきより赤面しているとも知らず。