「ナナ、君は怒ってないのかい?」

「怒る? どうして?」

「だって、たとえ半分とはいえ、自分の体を他人に乗っ取られるんだよ?」

「そうね……それがもしタカじゃなかったら、私はすごく怒ったと思う。でも、あなたなら大歓迎よ?」

「そうか、ありがとう」

「どうして、もっと早く言ってくれなかったの?」

「君に拒まれたらどうしようかと思ってね」

「バカね、そんわけないじゃない……」



それから数日後。


「タカ……」

「泣かないでおくれ、ナナ」

「でも……」


タカは、臨終の瞬間(とき)を迎えていた。

ナナはタカの冷たい手を包み込むように握ったが、もはやタカには握り返す力は残っていない。


「ナナ、これは別れじゃない。君と僕の、新たな始まりなんだ。共に生きよう? 永久(とわ)に……」

「そうね、タカ……」


やがてナナは確かに聞いた。ナナの中で、新たなシステムが起動する微かな作動音を……


Fin.