「少しは食べなくちゃ。もう何日もお水しか飲んでないのよ?」

「そう言われても、体が食べ物を受け付けないんだよ。いよいよ寿命が尽きるらしい」

「もう、そんな事言わないで! 怒るわよ?」

「ふっ。君は元気だなあ。若々しいし、羨ましいよ」

「それは言わない約束でしょ? 私だって、好きでそうしてるんじゃないんだから……」

「そうだったかな。最近は物忘れが激しくてなあ」

「それは仕方ないわよ……」


ナナはベッドの端に腰掛けると、タカの皺だらけの手を優しく握った。


「今日はナナに言っておきたい事があるんだ」

「あら、何かしら?」

「うん。怒らないといいんだがなあ」

「私が?」

「ああ。やはり言わないでおくかなあ」

「もう、言い掛けたんだから言ってよ!」

「そうか? そうだな、じゃあ言うとするか……」