「痛い」
「変なこと言うからだよ。」
「あのさ、キスしていい?」
「え、今?」
「今」
「………そういうのは聞かないでよ。」


視線を明後日の方向に向けて和泉は言った。



「一応聞いておこうかと」
「昨日は突然したくせに。」
「あれは、ごめん……」



謝ると和泉は顔を近付けてきた。
唇が触れるか触れないかのギリギリの距離。


「……いいよ。」



目と目が合って胸が高鳴る。


――ドキドキする。
あ、そっか……


これが好きって事か。



ゆっくりと口づけをする。


柔らかくて温かい。


名残惜しく唇を離す。



「ヤバ……緊張する。」
「キスなんて慣れてるんじゃない?」
「そのはずだったけど。すっげードキドキする。」
「なんで?」
「好きだからじゃね?」



ぎゅっと抱き締めたら、和泉の心臓も速くて。


俺は堪らなく嬉しかった。


本気の恋って悪くねーかも。



「俺と付き合ってくれませんか?」
「え…」
「告白したんだけど。本気で」
「……男だけどいいの?」
「仕方ないじゃん。好きになっちまったんだから。」
「じゃあ喜んで」



あ、また笑った。
よく笑う奴だったんだ。


「アイツに笑いかけんなよ、あんまり」
「アイツ?」
「今日一緒にいたやつ」
「ああ、彼は友達だよ。」
「でもダメ。ムカつくから。」



抱きしめて言ったら、和泉が吹き出した。


「なんだよ?」
「何でもない。新城って束縛強いんだね。意外……でも嫌じゃない。」
「知るか。」



だって俺は恋愛初心者。


これはきっと、初恋だから。