学ランで堂々と喫煙所に立っている2人組の男。

少しずつ歩み寄り、胸に手を当てた。



落ち着け。

落ち着け……。



「山岸さん…?」



ふたり同時に振り向く。

そこにいたのは、紛れもなく山岸さんだった。

今度こそ心臓が破裂しちゃいそう。



山岸さんは、一瞬目を大きく開き

そして、無邪気に笑った。



「実習の子じゃん。よく会うね」



あの日と同じ笑顔。

やっぱりかっこいい…。



「すごい偶然だよね。友達ときてんの?」

「はい!でももう出ますよ」

「そっかあ。そういや名前は?」

「菜摘です!高山菜摘っ」

嬉しくて興奮しているせいか、必要以上に大きな声が出る。

山岸さんは『ははっ』と笑いながら、煙草を灰皿に押しつけた。

「菜摘は門限ないの?」

『菜摘』

いつもみんなに『菜摘』って呼ばれてるけど

名前で呼ばれるのがこんなに嬉しいなんて、初めて知った。

たぶん、いや絶対、顔が緩んでる。