「えっと…覚えててくれたんですか?」
鼓動は早まる一方だ。
生まれて初めて、緊張で声が震える。
目は自分でもわかるほど泳いでるし、また顔真っ赤かも…。
こんな自分は本当に初めてだった。
「うん。だってほんとにうまかったし、1人だけめっちゃ茶髪だったし」
…そういえばそうだ。
『茶髪のうまかった子』っていうイメージは微妙だけど、それでもいいや。
だって、山岸…さん、が、覚えていてくれた。
「第一志望、うちの高校?」
「あ、はいっ」
勢いで答えてしまい、一瞬ドキッとした。
でも『違います』なんて言う必要はないし、言いたくもない。
…忘れられたくない。
少しでも印象に残りたい。
「そっか。うちの高校なんて誰でも入れるから安心しなね」
目を細め、にっこりと笑う。
笑ったらもっと可愛い。
それに大きな目のせいか、意外と童顔なんだ。
「待ってるからさ。じゃあ、またね」
山岸さんは手を振りながら、友達と一緒に奥へと歩いて行った。
ほんの数分だったけど
今、山岸さんと話したんだよね…?