あの時、男に首を絞められたとき、確かに、自分は死ぬと思った。

自分が何故生まれてきたのか、何のために生きているのか、結局わからないままで、名前すら与えられなかったけれど、仕方ないかなって思った。

紀一のことは、嫌いではない。

この人に殺されるのも、別にいいか、なんて思った。

でも、なんでか殺されなくて、なんと、名前までつけてもらった。


ふわふわと、不安定だった自分の存在が、今やっと、地に立って世界と自分とを感じている。

さくらは、今までにない期待と興奮を感じていた。