あたしと大地が付き合ってるってデマを流されて、担任に呼び出された件か。


たしかに怪しまれるかもしれないけど、そんな心配をしてる場合じゃない。


「疑われないような理由をつけて学校休むから、大丈夫」


「自然な理由を考えなさいよ? それと、おばさんにバレないように自然に振る舞ってね?」


「うん」


あたしたちはお互いの顔を見ながら、深くうなづき合い、それぞれの自宅へ戻った。


でも家に帰って、お母さんの顔を見た時ときの気まずさは、かなりのもので。


罪悪感に胸が痛んだけど、絶対に話すわけにはいかないから、必死に努力して自然な素振りを演じきってみせた。


そして迎えた翌日。


いつも通り学校へ行く振りをして家を出たあたしは、そのまま大地との待ち合わせ場所の駅へ向かった。


ホームへ着くと、もう大地はあたしを待っていた。


「来たか、七海」


「うん。……大丈夫だよね?」


「ああ大丈夫だ」


大丈夫。きっとうまくいく。


お姉ちゃんと柿崎さんは、きっといる。そしてあたしたちの話し合いはうまくいく。


発車のベルが鳴り響き、あたしと大地を乗せた列車は、予定通りにホームを滑り出した。


あたしと大地は振動を身体に感じながら、言葉少なに時を過ごす。


『きっと大丈夫』の魔法の言葉を、座席に座って窓の外を眺めながら、あたしは心の中で何度も繰り返していた。


お姉ちゃんたちがいる目的地へと、ひたすら心を逸らせながら……。