「だって、俺に人が寄って来てんねんで?」

「え?」

「いっぱいの人が、自分に好意を持ってくれてる。それって、そんなに嫌な事か?」

「それは……」

「確かに、感情を勝手に左右するのはどうかと思うし、最低やとも思う。でも、そこまですることちゃうとも、思う」

「……」

急に黙って麗菜の話を聞く友美。

「日記で勝手に感情を左右させる奴。やられたからって簡単に人を殺す奴。どっちも、どっちやろ。お前はもう、人を殺しとんねん。そんな奴が、悲劇のヒロインやめてくれへんか?」

「……」

「できたはずや。他にも、方法はあったはずや。なんで、『これからは自分の感情は日記の力で左右されなくなる』とか書けへんかったんや?」

「……」

「お前は、ただ復讐したかっただけやろ。世の中の男に。自分のやってる事を、正当化すんな!」

麗菜が叫ぶと同時に、沈黙が走った。

「……安心しろ。日記で、お前にはもうそんな事する男、近寄らさんようにしたるわ。誠、行くぞ」

麗菜は友美の日記を持つと、スタスタと歩き出した。

「友美ちゃん……ゴメン。確かに、悪かった」

誠はそう言い残すと、麗菜の後を追った。

「麗菜……ありがとう……」

その言葉と同時に、誠の頭を叩く麗菜。

「アホ!お前、何やっとんねん!」

「ちゃうんや、ちゃうんや!」

「何がちゃうんか、言うてみぃ!」

誠の両頬を引っ張る麗菜。

「いたたたた!ギブ!ギブ!悪かった!もうやれへんから!」

麗菜は手を離すと、スタスタと歩きだした。誠も、それに続いた。