こめかみを指先でポリポリ掻きながら、大地は渋い顔をしている。


大地が、お店に来なくなっちゃう? 大地に会えなくなるの?


それだけでこんなに息が苦しくて、こんなに泣きたくなる。


でもあたしは、泣くわけにいかない。


痛みも苦しみも悲しみも、平気なふりしてぜんぶ受け入れるしかないんだ。


「念のため、今から別行動しよう。俺はひとりで教室を片付けるから、お前は調理室の片付けをしてくれ。じゃあまた、そのうちな」


吹っ切るようにそう言って走り出した大地を、あたしは突っ立ったまま見送った。


きっと大地の心の中は、お姉ちゃんのことでいっぱい。これからお姉ちゃんに会えなくなる寂しさと切なさで一杯なんだろう。


あたしのことなんて、カケラもない。


大地は、完全に姿が見えなくなるまで、ついに一度もこっちを振り向かなかった。