海SIDE

「――!海!!」

 名前を呼ばれて、私はハッとした。

 我に返ると、目に映るのは見慣れた風景。

 私の右横に、レジ。

 正面にはお兄ちゃん。

 ――と、家族じゃない人たち。

 ここは、私のお父さんが営む食堂。――の、レジカウンター。

 見事高校を卒業した私は、大学ではなく、食堂に就職した。ってゆぅか、自営業だから、半ば強制的に働かされてる。

 まあ、小さい時からずっと憧れていた仕事だけど。

「何ボーッとしてんだよ」

 笑いながら私のおでこを小突くのは、お兄ちゃん。若松頼。

「まぁ、レジの仕事が暇なのはわかるけど」