「単刀直入に言うけど…」
俺は冷静になって、空を見上げながら愛の話に耳を傾けた。
「あたしの事、嫌い?何かしたかな…」
愛は一切こっちを向かず、目線は足に向けたまま小さな声でそう言った。
…違う。
違う、違うんだ。
「愛…」
「正直に言って。嫌いなら嫌いって言ってくれていいから…っ」
語尾の方は声が掠れていて、今にも泣きそうな声になっていた。
「愛…っ」
何故かもどかしくなって、じれったくなって…、ついに愛の肩を抱いて胸に引き寄せ抱きしめた。
「俺は…愛を嫌っていない」
惚れていると言ったわけでもないのに、みるみる自分の顔が赤くなるのが分かる。
でも、愛はそれを拒むように俺の胸を軽く押して見上げてきた。
――…っ。
「じゃあ…っ!」
涙でうるうるとした愛の瞳にとらわれそうになった俺は、思わず目線を逸らす。
「何で目をそらすの…?」
地雷を踏まれ、思わず体が跳ねる。
すると、柔らかくて細い愛の手のひらが思いきり俺の頬を挟んで強制的に愛の方へ向かされた。
「っ!?」
「…何か隠してるんじゃないの…?あたしが何かしたからでしょ?…あたしが嫌いだからで――」
「違う!」
涙を流している愛の言葉を遮るように叫んだ途端、愛の手のひらが俺の頬から離れた。
俺は何も考えられないまま、強引に抱きしめた。
「…俺の話…聞いてくれないか」
「…くっ…っうん…」
胸辺りに温かい液体と吐息が降りかかってくる。
「…移動しよう」
ゆっくりと頷いた愛をゆっくり立ち上がらせると、しずしずと私室へ向かった――