今までのことは、ほんの序章にすぎない。

 本当に戦いが始まるのは、これからなのだ。

 ボスが引退した後、この“ホン・チャンヤー”という組織を、色々なものから守っていかなくてはならない。

 ――…弱音を吐くことは、絶対に許されない。

 誰も、自分を守ってくれる人間は、ここにはいないのだ 。

 だが、自分を守ってくれたあの二人のナイトのことは、できる限り、守ってやろうと思う。

 それができるのは、多分、これからの自分しかいないのだから…。



☆ ☆ ☆



 あの火災のあった廃工場で茶髪の男を発見したという報告があったのは、引退式が終わってからのことだった。

 その男を確保してから、今日で丸一週間経つが、男はまだ意識を取り戻さなかった。

 医者に言わせると、これだけの傷を負いながら、生きているのが不思議なくらいだという。

 頭の損傷が特にひどく、何らかの後遺症が出るかもしれない、と言われた。



「…エイジ」



 この病院はユイ専属のもので、ここで起きた出来事は硬く箝口令がしかれている。

 患者の意識が戻ったという連絡をもらい、ユイは病室のドアを開けた。

 エイジは頭に包帯を巻いたまま、ベッドの上に起き上がっていた。



「エイジ? …俺のことか?」



 そう言って、エイジはうつろな目で、ユイを見上げた。











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