「狭い都市で鬼ごっこするのも、疲れるよなァ…」

「まったくだ」



 その言葉に同意して、レンはゆっくりと立ち上がる。

 ユイも、車のドアに手を掛けて二人に向き直った。



「これだけは信じてほしいの。私は、あなた達の味方でいたい」



 レンはふっと笑い、エイジはぽん、とユイの肩に手を置いて。



「行きますか」



 三人は車に乗り込んだ。

 エンジンをかけるのと同時にレンは車を急発進させる。

 ほどなく、三台の黒塗りの車が追い掛けてきた。



「タイムリミットは何時だ?」




 ハンドルを握り、ルームミラー越しにレンは聞いた。



「明日の朝七時。その時間に、現ボスが本部のビルに到着する予定なの」



 後部座席の窓を開け、銃をかまえるユイ。

 黒塗りの車は、つかず離れずの距離で追いかけてくる。

 こちらからの狙撃を警戒しているのかもしれない。



「七時、だな。…あと5時間」



 エイジはくわえタバコで、ぽつりと呟いた。



「…何考えてるか知らねェが」



 アクセルを踏み込み、レンは言った。



「あと5時間、邪魔はさせねェ!!」



 一気にスピードを上げて、後続車を突き放す。

 だが、そんなに甘くはなかった。

 すぐに追い付かれてしまう。



「何やってんだよ?」

「仕方ねェだろ、あっちの方が速ェんだからよ」



 こちらはというとすでにアクセルを一杯に踏み込んでいて、これ以上スピードは出ない。



「テメェが仕入れた車だろ。もっとマシなヤツはなかったのかよ」

「バカ言え、この短時間で、そんな手回しできるか! 車があるだけ有難いと思え」

「…使えねェ」

「何だとォ!?」

「待って」



 また本格的な小競り合いが始まらないうちに、ユイは思い付いたように言った。