「面倒なことに巻き込まれなきゃいいけどな」



 缶ビールを一口飲んで、レンが言う。



「俺は別にかまわねェぜ。助けを求めてるレディを、男として放っておけねェだろ」

「テメェはそれでいいかも知れねェが」



 コホンと咳払いをひとつして、レンは身を乗り出してエイジを見る。



「俺が言いてェのは、あと二つだ」

「…なんだよ?」

「あの女に貸した服は俺のだろ。それと、テメェのそのほっぺたはなんだ?」

「い、いやァ…彼女、なかなか照れ屋さんみたいで」



 背中を流してさしあげようとしただけなのに、とエイジはため息をつく。

 その左の頬は、心なしか手の形に赤くなっていた。