見とれてしまうような抜群のプロポーションに、黒いタイトミニのスーツ。

 首と腕には、金のアクセサリー。

 あれだけの大立ち回りをした後だというのに、息ひとつ乱れてもいない。

 いつの間にか呆然と見つめていて、女の訝しげな視線に気づいて慌てて目を逸らす。

 何だかバツが悪くなり、無言のまま回れ右をして歩き出そうとした時、知らないうちに破れていた買い物袋からジャガイモがいくつか転がり落ちた。



「あらら」



 女はジャガイモを拾おうとする。

 だがそれを制した。



「いいよ、んなの。俺がやるから、テメェはさっさとどっかいけ」



 これ以上関われば、お互いに面倒を背負いかねない。

 こっちも裏の世界に身を置く限り、余計なことに首を突っ込むのはごめんなのだ。

 ――それなのに。



「…お礼くらいさせてくれてもいいんじゃない、レン・マキハラ?」



 ジャガイモを拾うレンの手が止まった。



「……誰だ、テメェ…」



 意識しなくても、声が低くなる。

 だが女は怯む様子もなく、屈託のない笑顔をレンに向ける。



「そんなに警戒しないで。探してたのよ、あなたと、あなたの相棒のエイジって人を」

「何の為に」



 女は、ジャガイモの最後の一つを、レンに手渡す。



「…一緒にいたいな、って思って」



 あまりにも意味がわからないこの初対面の女に、レンは手渡されたジャガイモをポロリと落としてしまう――。