「…さぁね?」

和人は意味ありげに微笑むと私の額に口付けた。

「…っ?!」

私は額を手で覆う。
いきなり、何?

「っと。そろそろ次始まるから戻ろうぜ?」

確かに。
時計を見れば、次の授業まで5分しかない。
急いだ方がいいかも。

「そうだね。」

私はカバンを引ったくり、和人の後を追った。
和人の後姿を見ながら思う。
昔は、私よりも背小さかった癖に。
走るのも遅くて、泣き虫で。
何時も、私の後ろヒヨコみたいについてきてたのに。

…今じゃ、私が追うようになったんだね。

あ、何か凄い悔しい。
普通ならココで、ときめくとかあるんだろうけど。
相手は和人だし。
んな訳、ないない。

「梓!マジでおくれっぞ!!」

「うっさい!分ってるわよ!!」

和人は私の手を掴むと、さっきのスピードの二倍くらいの速さで走った。
…何時の間に、こんなに早くなってたんだろう。
うん、凄い悔しい。
でも、仕方ない事なのかもしれない。
和人は男だし、私は女。
力も、伸長も、敵わないのは確か。

「ずるいよ…和人ばっか。」

「なんだ?俺に惚れたか?」

ニヤニヤしながら和人は私に問う。

「…後で締め上げるから、覚悟しといて。」

和人は本気にするなよ、と笑いながら走っていた。

私達はギリギリで部屋にスライディングで入り込む。
間に合ってよかった。
私は軽くため息を吐いた。