ただ、大地の話を聞いていたら、少しだけ気持ちが楽になったんだ。


つらくて、苦しくて、でも絶対に我慢しなくちゃならない悲しみから、ちょっとだけ救われた気がしたの。


『我慢しなくていい』って言われて、逃げ場を見つけられたような気がしたの。


でも、それだけだよ。それ以外のことはなにも考えていないし、なにもするつもりもないから。


「花梨ちゃん。あたしこれから柿崎さんのカフェに、お姉ちゃんを迎えに行く。そんで一緒に帰る」


「……うん。そうね」


花梨ちゃんがあたしの肩をバンバン叩きながら、優しい声で励ましてくれた。


「えらいよ。七海ちゃん」


カフェに行こう。柿崎さんに笑顔で挨拶しよう。


そして、お姉ちゃんと一緒に帰ろう。


久しぶりに、手なんか繋いじゃったりしてさ。


ツキンツキンと胸が刺すように痛いけど、その痛みに気づかないふりをしながら、あたしは花梨ちゃんに手を振ってカフェに向かった。