この体勢、とは。

愛が仰向けで倒れていて、俺がその上で覆いかさぶっているという感じ。

端から見たら、まさに俺が愛を襲っているというように見えるであろう。

おまけに襟元を引っ張られたせいで自分の着物が少しはだけている。

俺は少々驚いたが、愛の顔は紅潮していて目を見開いていた。

小十郎なんて、開いた口がふさがらない、などという状態。

シン…と間があいたあと、俺は「す、すまぬ」と急いで起き上がった。

愛も「ごめんなさい!」と慌てて飛び起きた。

「し、失敬」

小十郎は明らかに動揺しながら、何事もなかったかのように襖をピシャッと閉めた。

ややこしいことになってしまった。

「夕餉、食べるのであればお先でお待ちしております。では」

去っていった小十郎を尻目に、愛を見つめる。

目が離せなくなり、何も言えなくなる。

このモヤモヤ何なのであろうか。

ころころと変わるこの女子の表情には何かがありそうで、気が気でない。

見ていて飽きないというのが一つだ。


――……面白い。

「愛」

「は、はいっ!」
いきなり慌てる愛。

「ふっ、本当におかしな女子だ」
わざと鼻で笑ってみる。

「なっ!?ひどいっ!!」
少し怒ったか。

「そこが、とても可愛らしいのだがな」
カラカラとからかいながら笑う。

「嘘つきっ」
今は…照れているな。

本当に面白い。

こんな素直に態度を顔に出す女子、初めて見た。

「気に入った。ここに住め。この部屋をそなたにやる」

「はぁ!?…え?いいの!?」

「いいと言っている」

優しく微笑むと、愛は俯きながら、ありがとう、と小さく呟いた。