自転車を駐輪場に停めると、パチンコ屋の扉を開けた。扉が開くと同時に、けたたましい音が誠を包んだ。

「259番台、ラッキーチャンススタート致しました」

「72番台、ラッキーチャンススタート致しました」

などと放送が聞こえる。誠は中に入ると、キョロキョロと辺りを見渡した。客が多くて、台にはほとんど人が座っている。リーチをはずして台を叩いている金髪の人が目立つ。

誠は『うどん天国』の台を見に行った。すると1席、入り口付近の端の台だけが開いていた。

「ここにしよかな…」

ボソッと呟き、その台に座ろうとした矢先、隣に積んであったドル箱に躓いてしまった。ドル箱の中に入っていた玉がパチパチと弾けて少しこぼれてしまったが、周りの大音量で玉の音はかき消された。

誠は気を取り直し、台に座った。千円を左上の入金口に入れ、玉が出てくると、誠はさっそく打ち出した。すると、一回転目でリーチがかかった。

「あ、リーチか。まぁ当たらんやろ…」

そう思ってよそ見をしていると、「大当たりー!」と言う声が誠の台から聞こえた。

「あ、当たった…」

誠はそれからも打ち続けた。19時になると店を出て、換金しに行った。換金所に行くと「五万千円です」と言われ、現金を差し出された。現金をゆっくり受け取ると、誠はその場に立ち尽くした。

「え…何これ…千円で五万千円の儲けやから…実質勝ったのは…五万円…」