確かに魁一はこの学校のアイドル的存在。


ヤンキー王子なんてあだ名をつけられて、熱狂的なファンがいるくらいの人気者。


他の女子は、魁一にキスされたら泣いて喜ぶだろう。


たとえそれが、彼の気まぐれだって。


でも、だからってこんなことが許されるはずない。



「……あたしにとってはすごくすごく大切なファーストキスだったの」


「ハァ?」


あたしの思い描いてたキスって、あんなんじゃない。


……――あんなのキスじゃない!!



「さっきのキスが……生まれて初めてのキスだったんだから!!」


魁一にとってはなんて事のないキスでも、あたしにとってはそうじゃない。


あたしは魁一の胸を力いっぱい押し退けて、屋上の扉に向かって駆け出した。