「ううっ…。」

ヨシヨシ、する雛斗の手は

温かくて優しくて、心地よい。

「お前、よく泣くな?」

雛斗の甘い香りに包まれて

あたしは、すこしはにかんで

わらった。

泣き虫って思われても今は

いいや。

もう少しだけこのまま…。

夕日に照らされた雛斗の顔を

チラッと上を向いて

覗いたら

「ん?」

と首を傾げる雛斗がとっても

愛おしく思えた。

でもあたしは、まだ

この感情の名前を

知らずにいたのだった。